グラス


きのうは会社づとめの最後の日だった。
たくさんの花束と、何度も「ひとこと」を言わされて、
社屋を出る。新橋駅へ向かう。信号を渡ると、
空気が変わった。

家に帰って、会社で使っていたグラスを丁寧に洗って、
細かな瑕や染みを洗って、
ビールを注ぐ。 自分に「おつかれさま」
なんて言わない。

翌朝。
グラスは僕の机の上にゐる
僕は、
会社の机から見ていた世界と、僕の机から見えている世界の
違いについて考える。