M.ポーターのCSVに触れて


企業が生み出そうとしている価値が社会と共有できるものであれば(Shared Varue)、その企業なり商品なりは他にはない強さ(競争優位*)を手に入れることができる。

「そりゃそうだ。」という企業の声が聞こえてきそうであるが、M.ポーターの革新的なところは、その価値、社会と共有できる価値とは何であるかを企業はわかっていないと言っているところである。(・・・と言っているのだと思う。)


実は企業のみならず誰も現代における社会的な価値とは何かを特定することはできていない(と僕は思う)。

かつては企業にとっての(そしてその社会にとっての)社会課題とは自明であったし、共有もできてていた。

例えば「アメリカのように豊かな生活をしたい」という価値のために、電球やトランジスタラジオや洗濯機を作ってきた日本の家電メーカー。
「トレンディーで安い(ときに高い)」服を作ってきたアパレル業界。
「便利に外出できる(そして商店街はつぶれる)」クルマ社会をつくってきた自動車関連産業。
などなど。

しかしいま、世界を覆い、ひとびとの暮らしを襲っている、山積みの問題や課題について、誰も優先順位をつけることすら、できない。企業も僕たちも、こんな時代を生きている。


企業は(もちろん僕たちも)、何が課題であり、解決であり、求めるべき価値であるのかを自分たちで発見しなくてはならない。待っていても誰も教えてくれないのだから。

企業はこの一歩を踏み出さなくてはならない。そして定義された価値をもとに事業、商品を捉えなおし(reconceive)、バリューチェーンを見直し(redefine)、地域や周囲(local cluster)とのつながりをもう一度立ち上げなくてはならない。とポーターは述べている。
この一連のアクションが必要。だからポーターは"Creative"と言っているのだろう。共有できる社会価値は自ら見つけ出し創り上げなくてはならない。 So, You Should CREATIVE Shared Value !


で、「具体的に何ができるか」「どんな提案ができるか」が僕たちマーケティング屋、広告屋の課題だが、ここについてはポーターはヒントはくれるが、助けてはくれないと覚悟しよう。それこそ僕たちがCreativeしなくてはならないところなのだ。
わかっているのは、「共有できる社会価値」という事業戦略の拠って立つ大前提が揺らいでいる、それを誰もが考えなくてはならない状況にある、ということだ。



※競争優位: 単なる経済利益のみならず、企業/商品の存在意義(アイデンティティ)や、社会的承認、評価、評判(レピュテーション)までを生みだすポジショニングのことだと僕は理解している。